剣崎比留子シリーズを読む順番 ―『屍人荘の殺人』から全4冊の刊行順と、『明智恭介の奔走』の置き場所
今村昌弘の〈剣崎比留子〉シリーズは『屍人荘の殺人』『魔眼の匣の殺人』『兇人邸の殺人』の3長編と、前日譚の短編集『明智恭介の奔走』。刊行順の一覧と、必ず『屍人荘』から入る理由、短編集をどこで読むかを、仕掛けに触れずに案内します。
今村昌弘の〈剣崎比留子〉シリーズは、2017年のデビュー作『屍人荘の殺人』から始まる3長編と、2024年に出た短編集『明智恭介の奔走』の全4冊。神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と、「探偵少女」剣崎比留子が、秘密組織「班目機関」の影を追いながら閉鎖空間の事件に巻き込まれていくシリーズです。
決まりは一つだけ。最初は『屍人荘の殺人』から。 長編3作は刊行順に進み、短編集『明智恭介の奔走』は刊行順どおり4冊目でも、『屍人荘』の直後でも構いません。このページでは、4冊の刊行順を一覧にし、「最初は『屍人荘』」を守るべき理由と、短編集の置き場所を説明します。
こんな読者のための一冊たち
- 『屍人荘の殺人』を読んで、続編をどの順で読むか決めたい
- 『明智恭介の奔走』が「『屍人荘』以前の話」と聞いて、先に読むべきか迷っている
- シリーズをまとめて読む予定なので、抜けのない一覧がほしい
以下、仕掛けには指一本触れていません。安心してお読みください。
全4冊の刊行順 早わかり
| 順 | 書名 | 年 | 形式 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 屍人荘の殺人 | 2017 | 長編 | デビュー作。夏合宿のペンションで籠城。鮎川哲也賞・本格ミステリ大賞 |
| 2 | 魔眼の匣の殺人 | 2019 | 長編 | 「2日のうちに4人が死ぬ」と告げられた元研究施設 |
| 3 | 兇人邸の殺人 | 2021 | 長編 | 廃墟テーマパークの屋敷に待つ首斬り殺人鬼 |
| 4 | 明智恭介の奔走 | 2024 | 短編集(5編) | 『屍人荘』以前の出来事。名刺を配り歩く名探偵志望 |
読み方の決まりは一つだけ
『屍人荘の殺人』を最初に。 理由は二つあります。
一つ目は、長編3作が続き物だからです。『魔眼の匣の殺人』は前作に続く葉村と比留子の組み合わせが、班目機関の元研究施設に足を踏み入れる話で、『兇人邸の殺人』では二人が追い続ける班目機関の研究資料をめぐって屋敷に潜入します。各作の事件は独立して解けますが、二人の関係と班目機関をめぐる筋は刊行順に積み上がっていきます。
二つ目は、『屍人荘の殺人』が「殺人より先に、足もとの世界が変わってしまう」作品だからです。この一冊で起こることを知ったうえで続編を読むのと、知らずに読むのとでは、受け取れるものがまったく違います。第1作の驚きを守るためにも、ここから。
短編集『明智恭介の奔走』は、『屍人荘の殺人』以前の出来事を描く作品です。それでも、『屍人荘』より前に読むのはおすすめしません。 刊行は2024年で、第1作を読んだ読者に向けて書かれています。刊行順どおり4冊目に読むのが基本で、長編の緊張を一息つきたいなら『屍人荘』の直後に挟んでも構いません。
各作の紹介
屍人荘の殺人(2017・第1作)
神紅大学ミステリ愛好会の一回生・葉村譲と、会長で「神紅のホームズ」を自称する明智恭介は、同大学の「探偵少女」剣崎比留子に誘われ、映画研究部の夏合宿に同行して紫湛荘を訪れます。合宿初日の夜、参加者たちは想定外の事態によって館への籠城を余儀なくされ、やがて部員の一人が密室で惨殺死体となって発見されます。第27回鮎川哲也賞を満場一致で受賞し、第18回本格ミステリ大賞を受賞、2018年のミステリベストランキングを三冠1位で席巻したデビュー作。〈剣崎比留子〉シリーズの第1作にあたるので、続編へ進む前にまずここから読むのが順当です。
魔眼の匣の殺人(2019・第2作)
葉村譲と剣崎比留子は、ある調査の過程で人里離れた元研究施設「魔眼の匣」を訪れます。かつて班目機関が使っていた施設で、予言者として畏れられる老女から「2日のうちにこの地で4人が死ぬ」と告げられたあと、外界と繋ぐ唯一の橋が焼け落ち、訪問者たちは閉鎖空間に取り残されます。〈本格ミステリ・ベスト10〉2020年版2位、〈このミステリーがすごい!〉3位、週刊文春3位。題材の不思議さと謎解きの手順が同居する第2作です。
兇人邸の殺人(2021・第3作)
廃墟テーマパーク「ルナリア・ガーデン」の敷地内にそびえる奇怪な邸宅、兇人邸。葉村と比留子は、追い続ける班目機関の研究資料が屋敷内に隠されているとの情報を得て、資料回収を目論む一団とともに深夜の邸内へ潜入します。一行を待ち受けていたのは、無慈悲な首斬り殺人鬼。逃げる緊張と推理の手順が一つの舞台で絡み合う第3作で、〈このミステリーがすごい!〉2022年版国内編4位。
明智恭介の奔走(2024・短編集)
神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介は、小説の名探偵に憧れ、事件を求めて名刺を配り歩きます。助手であり唯一の会員でもある葉村譲を連れて、サークル棟の盗難騒ぎや商店街の噂、試験問題漏洩事件に首を突っ込んでいく。『屍人荘の殺人』以前の出来事を描く〈明智恭介〉シリーズ初の短編集で、書き下ろしを含む全5編。2024年6月に東京創元社から刊行され、週刊文春ミステリーベスト10の2024年国内部門7位。長編の張り詰めた空気とは違う、小さくて騒がしい謎が並びます。
よくある質問
Q. 『明智恭介の奔走』は前日譚だから先に読むべき?
A. いいえ。『屍人荘の殺人』以前の出来事を描いていますが、刊行は第1作の7年後で、第1作を読んだ読者に向けて書かれています。『屍人荘』のあとに読んでください。
Q. 長編は順番を入れ替えてもいい?
A. 各作の事件は独立して解けますが、葉村と比留子の関係や班目機関をめぐる筋は刊行順に積み上がります。『屍人荘』『魔眼の匣』『兇人邸』の順を守るのがいちばん自然です。
Q. 『でぃすぺる』はシリーズに入る?
A. 今村昌弘の作品ですが、〈剣崎比留子〉シリーズではありません。書評は別に用意しています。
最初の一冊は『屍人荘の殺人』。そこから刊行順に、紫湛荘、魔眼の匣、兇人邸とめぐって、名刺を配り歩く明智恭介の日々で一息ついてください。
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