プログラミング

KindleをPDF化してKindle Scribeで読むと文字がガビガビ|原因はモニターの解像度だった

自分でPDF化したKindle本をKindle Scribeに入れると文字の輪郭がぼやける現象について、原因の切り分けと直し方をまとめました。犯人はJPEG圧縮ではなく、スクリーンショットを撮っていたPCモニターの解像度不足でした。モニターを縦設定にして撮り直した実測値、USB転送を選んだ理由、サイドロードPDFへの手書きのファームウェア条件まで記載しています。

目次

はじめに

Kindle Scribe(Amazonの電子ペーパー端末)で本を読んでいて、教科書や専門書にペンで直接書き込みながら読みたくなったことはありませんか。
通常のKindle本のままだと、Scribeで書けるのは付箋やメモ欄が中心で、紙のように本文の好きな場所へ自由に手書きする、という読み方はできません。

そこで行き着くのが、「Kindleの本を自分でPDF化して、それをScribeに取り込む」という方法です。
PDFにしてしまえば、ページのどこにでも自由にペンを入れられるからです。
同じKindleの本をわざわざPDFにし直すなんて遠回りに見えますが、本文に自由に書き込むための一手間、というわけですね。

私は以前、このPDF化に使う「kindle_shot」というアプリ(Kindleなどの電子書籍をPDF化・OCRするツール)を作って公開しました。

ところが、このアプリで自分でPDF化した本をScribeに入れてみると、文字の輪郭がぼやけていて、普通にKindle本を読むときよりも明らかに解像度が低く見えました。
いわゆるガビガビした見え方です。

そこで原因を調べたところ、犯人は意外なところにいました。
Kindle側でもアプリ側でもなく、PDFを作るときにスクリーンショットを撮っていたPCのモニターの解像度だったんです。
撮影に使うモニターの設定を変えて作り直し、USBでScribeに入れたら、普通にKindle本を端末で読んでいるときと同じ解像度になりました。
ガビガビは消えて、その上に手書きもできています。

この記事では、なぜガビガビになるのかという原因と、それをどう直したかをまとめます。
数字の話も出てきますが、要点は「撮影に使うモニターの解像度を上げて作り直す」「USBで入れる」の2つなので、細かいところは読み飛ばしても話は繋がるように書きます。

結論:撮るときのモニター解像度を上げて作り直し、USBで入れれば直る

先に全体像をまとめておきます。
やることは大きく3ステップです。

  1. 撮影に使うPCモニターを「縦」設定にして、kindle_shotで撮り直す(1ページの解像度が上がる)
  2. できたPDFを、Send to KindleではなくUSBでKindle Scribeに転送する(容量上限もダウンサンプルもない)
  3. Kindle Scribeのファームウェアが新しければ、そのPDFに手書きできる(条件は後述)

順番に、なぜそうするのかも含めて説明していきます。

なぜガビガビになるのか

最初に疑ったのは、「PDF化するときにJPEG圧縮で潰れているのでは」という点でした。
結論としてはこれは間違いで、kindle_shotが作るPDFに画質の劣化はありません。

問題のPDFを調べてみると、中の画像はPNG(可逆圧縮)で埋め込まれていました。
PNGはzlibという可逆圧縮(あとから完全に元へ戻せる圧縮)なので、JPEGのように情報が捨てられて潰れることはありません。
「元の数パーセントのサイズに圧縮」と表示されることがありますが、これは白地に黒文字の画像でzlibがよく効いているだけで、画質が落ちているわけではないんですね。

そもそもkindle_shotは「アプリのウィンドウをそのまま物理ピクセルでスクリーンショットして、等倍でPDFに埋め込む」という作りです。
拡大も縮小も再エンコードもしていないので、撮った解像度がそのままPDFになります。

では何が原因だったかというと、単純に1ページの解像度が足りていなかった、それだけでした。

Kindle Scribeの画面は10.2インチ・300ppiで、縦長ページの表示領域はおよそ1748×2480ピクセルあります。
ところが、最初に作ったPDFは1ページが1447×2052ピクセルしかなく、表示領域より小さい画像でした。

小さい画像を画面いっぱいに表示するには、端末側が引き伸ばして(拡大して)表示するしかありません。
この拡大のときの補間処理が、あのガビガビの正体でした。
逆に、表示領域より大きい画像なら端末は縮小して表示するので、補間ボケが出ません。
つまり「拡大して見せる」か「縮小して見せる」かの境界をまたぐことが、画質の分かれ目だったわけです。

少し噛み砕くと、印刷で「小さい写真を引き伸ばすとボケる、大きい写真を縮小印刷するとくっきりする」のと同じ理屈です。
表示する枠より大きい素材を用意してあげればいい、ということになります。

なお、この甘さがはっきり出るのは、Kindle ScribeのようにドットがくっきりしたE Ink(電子ペーパー)端末で読んだときです。
iPadのような液晶のタブレットだと、もともとバックライトとRGBで甘さが目立ちにくいので、同じPDFでもそこまで気にならないことがあります。

ここまでが「なぜガビガビなのか」でした。
ただ、本当に大事なのはこの先です。
KindleアプリからPDF化しているのに、なぜ最初は1447×2052なんていう中途半端な解像度になってしまったのか。
その理由は、1ページの解像度がどこで決まるかにありました。

盲点:1ページの解像度は、撮るときのモニターの向きで決まる

1ページの解像度を決めていたのは、Kindleでもkindle_shotでもなく、スクリーンショットを撮るときに使っていたPCモニターの向きでした。

kindle_shotは、モニターに映ったKindleのウィンドウをそのままの物理ピクセルでスクショするツールです。
なので、Kindleのページが画面上で何ピクセルを占めているかが、そのままPDFの解像度になります。
言い換えると、「ページを画面上でできるだけ大きく映す」ほど、高解像度のPDFになるということです。

ここで効いてくるのが、Kindleのページが縦長(ポートレート)だという点です。
Kindle for PCは1ページをまるごとウィンドウに収めて表示するので、ページの高さは画面の縦のピクセル数を超えられません。
つまり、縦長のページにとっては画面の「縦」の解像度が、そのまま天井になります。

私がふだん使っているのは4Kモニター(3840×2160)の横置きです。
横置きだと縦方向は2160ピクセルしかありません。
そこにアプリのツールバーや余白が入るので、実際にページが使えるのは縦2052ピクセルほど。
横幅はページの縦横比に従って約1447ピクセルに決まり、これが最初の1447×2052の正体でした。
しかもこのとき、横に広い画面の左右はただの余白で、せっかくの横方向のピクセルはページに1つも使われていません。
縦長のページを横長の画面に映すと、肝心の縦が足りず、要らない横が余る。
これが、解像度が伸びていなかった理由でした。

おまけに、この「画面の縦が天井」というルールにはもう一つ罠があります。
見開き(2ページ表示)で撮ると、1ページあたりに割ける横幅が半分になり、解像度がさらに落ちます。
PDF化のときは必ず1ページ表示にしてください。

逆に言えば、解像度を上げるレバーは「1ページを画面上で何ピクセルで映せるか」、これ一つだけです。
打てる手は2つで、もっと解像度の高いモニターを使うか、ページの形(縦長)に画面の形を合わせるかです。
前者はモニターの買い替えになってしまうので、現実的なのは後者、つまり画面を縦にすることでした。

直し方①:撮影に使うモニターを「縦」設定にして作り直す

盲点が「画面の向き」だとわかれば、対策はシンプルです。
画面を縦にして、縦長のページを画面いっぱいに大きく映してから撮ります。
私のモニターはスタンドの都合で物理的に縦回転(ピボット)ができないのですが、Windows側の設定でディスプレイの向きを「縦」に変えるだけで大丈夫でした。

要点だけ書くと、こんな流れです。

  1. Windowsの設定でディスプレイの向きを「縦」に変更します(パネルが物理的に横置きのままでも、OSが2160×3840の縦長フレームバッファを作ってくれます)
  2. Kindle for PCを起動して最大化し、PDF化したいページを1ページ表示で出します
  3. kindle_shotでキャプチャして、あとはいつも通りトリミング・PDF変換すれば完成です

設定画面のどこを触るか、自分の環境で何ピクセル必要なのかを計算する話は、別記事に手順の完全版としてまとめました。

プログラミング 電子書籍キャプチャの解像度を上げるモニター設定|縦向き・必要ピクセルの計算・見開きNGの理由 電子書籍をスクリーンショット方式でPDF化するときに、画質を決めているのはモニターの縦のピクセル数です。読む端末から必要ピクセル数を逆算する方法、Windowsの画面の向きを「縦」にして天井を引き上げる手順、見開き表示が解像度を落とす理由、撮影後のピクセル数の確認方法をまとめました。

これで1ページ2160×3040ピクセルのPNGになりました。
横置きのときが約297万ピクセル、縦設定にすると約657万ピクセルなので、1ページあたりの情報量がおよそ2.2倍になりました。

そして肝心なのは、縦の解像度が2052から3040ピクセルに増えて、Scribeの表示領域(縦2480)を上回ったことです。
これで、さきほどの「拡大して見せる側」から「縮小して見せる側」へ境界をまたいだので、ガビガビが消えました。

ここでひとつ補足しておくと、この縦設定のPDFは「横置きで撮った小さい画像を後から引き伸ばしたもの」ではありません。
Kindle for PCが大きい窓で電子書籍データをレンダリングし直した状態を撮り込んでいるので、実際にディテール(情報量)が増えています。
だから拡大ボケが消えるわけですね。

増やせる解像度の上限は「Kindle for PCが描ける精細さ、つまり元の電子書籍データの解像度」までなので、無限に上げられるわけではありませんが、私が試した本では天井に余裕がありました。

直し方②:USBでKindle Scribeに転送する

解像度を上げると、当然ながらファイルサイズも大きくなります。
私が検証に使った本(漫画・204ページ)は全ページ2160×3040で統一して、約1.2GB(1234MB)になりました。

ここで効いてくるのが転送方法です。
Kindle Scribeにファイルを入れる方法はいくつかありますが、高解像度のPDFを入れるならUSB一択でした。

転送方法 ファイルサイズの上限 画質
Send to Kindle 1ファイル最大200MB Amazonのサーバを経由するため、サーバ側でダウンサンプルされる可能性がある
USB接続 上限なし PCからローカルにコピーするだけなので、作った解像度がそのまま乗る

まず、1.2GBのPDFはSend to Kindleではそもそも送れません(最大でも200MBまで)。
USB接続ならサイズ上限がないので、そのまま入ります。

もうひとつ大事なのが画質です。
USB転送はPCからScribeへローカルでコピーするだけでAmazonのサーバを通らないので、サーバ側で勝手に解像度を落とされる(ダウンサンプルされる)心配が原理的にありません。
せっかく上げた解像度をそのまま端末に乗せられる、というわけです。

具体的な転送のやり方は、PCとScribeをUSBケーブルでつなぐと、ScribeがMTPデバイスとして認識されます。
エクスプローラーで「Kindle Scribe → Internal Storage → documents」を開いて、そこにPDFをコピーするだけです。
MTP接続なのでドライブレターは付きませんが、普通のコピー&ペーストで大丈夫です。
documentsフォルダに入れると、端末のライブラリに本として並びます。

取り込んだPDFに手書きする(ファームウェア条件あり)

当初の狙いは「PDF化した本に書き込む」ことだったので、ここがいちばん気になっていたところでした。
実機(Kindle Scribe)で試したところ、USBで入れたPDFにスタイラスで注釈・手書きができました。

ただし、これにはファームウェアの条件があります。

以前は、USBでサイドロードしたPDFには手書きできませんでした。
Scribeの手書き注釈はドキュメントがKFX形式であることが必要で、Send to Kindle経由ならAmazonのサーバがKFXに変換してくれるのですが、USBで入れたPDFは変換されないため、閲覧専用だったんですね。

これが、私が調べた範囲ではファームウェア5.19.2で全世代のScribeがUSBサイドロードPDFへの手書きに対応し、さらに5.19.3系(2026年3月)でPDF対応が改善されたようです。
ペンの選択・マーカー・不透明度なども通常通り使えました。

なので、もし古いファームのままで「USBで入れたPDFに書けない」という場合は、まず端末のファームウェアを更新してみてください(読むだけなら古いファームでも大丈夫です)。

どれくらい変わったか

実際に計測した数値を並べておきます。

項目 横置きで撮影 モニターを縦設定にして撮影
1ページの解像度 1447×2052ピクセル 2160×3040ピクセル
1ページの情報量 約297万ピクセル 約657万ピクセル(約2.2倍)
画像形式 PNG PNG

形式はどちらもPNGで劣化はなく、変わったのは解像度だけです。
それでも「拡大表示でボケる側」から「縮小表示でくっきりする側」に境界をまたいだことで、見え方ははっきり変わりました。

注意点とトレードオフ

良いことばかりではないので、正直なところも書いておきます。

まず、ファイルサイズが大きくなります。
検証本で1.2GB級です。
これは画質を取った結果のトレードオフなので、ある程度は割り切りが必要かと思います。
USB前提なら容量上限には引っかからないので、端末の空きが足りる限りは困らないと思います。

もしサイズを減らしたいときは、グレースケール化という手があります。
本文ページは色情報を持っていない(R=G=Bになっている)ことが多いので、グレースケールにしても情報の損失はなく、解像度も変わりません。
私の検証本だと1234MBが概算で800MBくらいにはなりそうでしたが、これは1ページ試算からのざっくり概算なので、本番は実測してみてください。

一方で、解像度を落とす圧縮(ダウンサンプル)はやめたほうがいいです。
それをやると、せっかく解像度を上げてガビガビを消した意味が無くなってしまいます。

それから、今回の手順はKindleなどの電子書籍をスクリーンショットで取り込むケースの話です。
もし紙の本が手元にあるなら、スキャナーで600dpiくらいで取り込めば(いわゆる自炊ですね)、密度がディスプレイを上回るので最初からくっきりします。
ただし、DRMのかかったKindle電子書籍には当然スキャナーは使えないので、その場合はkindle_shotのようなスクリーンショット方式が必要になります。

なお、今回実機で確認したのは漫画のPDF(204ページ)ですが、ガビガビが直るかどうかは中身が漫画か文字かには関係なく、1ページの解像度とScribeの表示領域の大小だけで決まります。
なので、教科書や専門書のような文字中心のPDFでも、同じように効きます。

ひとつだけ未検証なのは、iPadなどの液晶端末での見え方です。
原理は同じはずですが、液晶はもともと甘さが目立ちにくいので、Scribeほど劇的に差が出るかはまだ確かめていません。

まとめ

いかがでしたか。
今回は、KindleをPDF化した本をKindle Scribeで読むと文字がガビガビになる問題の原因と、その直し方を紹介しました。

ざっくり振り返ると、次の3点です。

  1. 原因は、撮影に使うPCモニターの解像度不足による拡大ボケでした(JPEG圧縮の劣化ではありません)
  2. モニターを縦設定にして撮り直すと、1ページの解像度が約2.2倍になり、拡大ボケが消えました
  3. USBで転送すると容量上限もサーバ側のダウンサンプルもなく、ファームが新しければ手書きもできました

PDF化した本をKindle Scribeで快適に読み書きしたい方の参考になればと思います。
元になったツール「kindle_shot」についてはこちらの記事にまとめているので、合わせて読んでみてください。

この記事が誰かの役に立てばうれしいです。